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「・・・僕?」
赤瞳、銀髪の少女が言った。


 


リターン<本編>
第壱話 使徒、襲来 Aパート


 誰かが泣いている。

 誰だろう?

 ・・・小さな子供。

 子供は泣きながら、背を向ける男の大きな背中に、小さな手を突き出している。

 全身で、連れて行って、と必死にせがんでいた。

 そんな子供を引き止める大人の手がある。

 ほんとに手だけ。

 身体もない。

 そして少し大きめのバッグが子供の横に置いてあった。

 僕と同じ。

 君は誰?

 僕と同じく、父さんに捨てられた君は。

 ・・・いや、僕は知っている。

 やっぱり見なくていい。

 見たくない。

 この先は知っている。

 これは夢。

 ずっとずっと見てきた僕の夢だ。




 僕の身体は心とは裏腹に、子供の正面に立った。

 その顔は10年前の僕自身だった。





 碇シンジは第3新東京市へ向かうモノレールの中で目を覚ました。微かな振動が眠りを誘ったようだ。

 車内を見渡してみると、誰一人いなかった。モノレールも停車している。

「ここが第3新東京市駅・・・? ・・・違うようだけど・・・」

 だいたいこの車両は政府特別専用列車とかで、ほとんど止まる駅はないはずだった。途中のアナウンスでも次は第3新東京市だと言っていたし。

「どうしたのかな?」

 シンジはスポーツバッグを担いで、列車から降りた。とたんに街に流れるアナウンスが耳に入ってくる。

「本日12時30分。東海地方を中心とした関東、中部全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々はすみやかに指定のシェルターへ避難してください。繰り返しお伝えします――」

 一通り聞いて、途方にくれてしまった。


 こんな時に。・・・どうすればいいんだよ・・・。


 ここへやって来る理由である父親からもらった手紙には、「来い」という一言と、迎えに来るという女の人の写真、赤いカード、それと乗車券と指定席券が入っているだけだった。突然の呼び出しの理由も、本当の目的地も書いてない。分っているのは、モノレールに乗って第3新東京市まで来い、ということだけだった。


 そういえば、写真の裏に電話番号が書いてあった・・・よね?・・・たぶん。

 
 ふと思い出して、スポーツバッグから手紙を手に取り、中から写真を出す。その写真には結構美人と思われる女(ひと)が写っている。胸のところを矢印で差して、「シンジくん江。私が迎えに行くから待っててネ。ココに注目」と書きこんであった。シンジは「変な女(ひと)」と思いながら裏を返す。


 あった、よかった。


 シンジはほっとして、公衆電話を探す。大概のひとはみな携帯電話を持っているが、シンジは持っていなかった。かける人も居ないし、かけてくる人もいないからだ。

 目当ての公衆電話は直ぐに見つかった。

 受話器を取って番号を入力しようとして、受話器から流れるアナウンスに気付いた。

「・・・特別非常事態宣言のため、通常回線は現在、不通となっております・・・」


 電話もダメってコト?


「やっぱり来るんじゃなかった・・・」

 シンジは急に重くなった受話器を下ろし、シェルターを目指して歩き出した。





 人気の無い街を、一台の車が疾走していた。

「よりによって、こんな時に見失うだなんて・・・・・まいったわね」

 運転席で先ほどの写真の女性、葛城ミサトが呟いた。彼女は遅刻の常習犯であるが、こと仕事に関しては遅刻などしたことはないのだが、待ち合わせに完璧に遅れていた。特別非常事態宣言のためである。

「どう? トレースのほうは?!」

 いらいらと携帯電話に向かって質問する。

「はい、探知しました! 現在E−1ポイントから第14シェルターへむかっています!・・・モノレールが緊急停止した駅にしばらくいたようです」

「チッ、ちょうど使徒が向かってるとこじゃないの!」

 ミサトは携帯を投げ出して、アクセルを踏み込んだ。





 それはシンジがシェルターへ向かう途中のことだった。

 急に、ズン、という地響きを感じたのだ。

 電線に止まっていた鳥がいっせいに飛び立つ。

「地震?」

 地面に目線を落としてみるが、もう何も感じなかった。

「・・・何だったんだろ」

 また歩き出そうとしてふと前をみると、10メートル程先にシンジと同じ位の歳の制服姿の少女が立っていた。

 その水色っぽい銀髪の少女が、山を指差していた。

 自然と指差す山に視線が移る。

 夕日が目に入って眩しかったが、すぐにそれを遮るものが現れた。

「・・・なっ!」

 それは巨大な何かだった。夕日がちょうどその何かの後方に回り、巨大なシルエットを作っていた。

「何なんだ?! アレ」



使徒



「シト?」



・・・神の使いよ



「何だっていいけど、早く逃げないと。―――君も一緒に・・・ってあれ?」

 少女のいたところには誰もいない。

 シンジは辺りを見渡すが、誰一人いなかった。


 ???


 見知らぬ少女は、あの巨人のことを使徒と呼び、シンジが発見することを促した。


 とにかく早く逃げろってことかな・・・? でも、シェルターは使徒のいる方だ・・・!


 そのとき、爆音とともにミサイルがシンジの頭上を飛び越え、使徒へと向かっていく。

「巡航ミサイル・・・!」

 しかし発射されたミサイルは全て命中しているようだが、使徒はまったく堪えていないようだ。巨大なミサイルもいきなり太くなった腕で受け止め破壊している。そのうち腕からビームのようなものが、纏わりつく戦闘機を撃墜しだした。

 シンジはシェルターにも行けず、ただ呆然とその光景を眺めていた。

 ―――一機の戦闘ヘリが、頭上に墜落してくるまで。


 


後書き
 リターン<本編>第壱話Aパートをお送りします。まだ、駄文の第弐話に繋がるまでに至っておりません。とにかく早い更新を、と思ってましたらこんなところでした。(でもこれでも快挙なんですけど。)
 また次も早めに更新できるように頑張ります。
00.1.19 Version 1.0


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