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<ご注意>



このお話は、TV版第弐拾参話に相当します。

そのため少々アスカが精神的にダメージを受けている状態です。




















もう私の価値なんてなくなったの、どこにも



嫌い、

だいっきらい!

みんな嫌い!







・・・でも一番キライなのは―――私


もうどうでもよくなっちゃった



・・・何もかも


歪んだ月
第壱話 歪んだ時間


 のこのことまたこれに乗ってる。未練たらしいったらありゃしない。

 今のアタシが役に立つことなんて何もないのに。

「弐号機、第8ゲートへ。出現位置決定次第、発進せよ」

 はん、私が出たって足手まといになるだけでしょ。

「目標接近、強羅絶対防衛線を通過」

 ―――どうでもいいわよ、もう。

「アスカ」

 ミサトだ。その表情にはいつもの他人にあわせただけの笑いはない。―――人類の敵が目の前にいるのだから、当たり前なのだけれど。アタシはあの笑顔が嫌いだった。

「―――何よ」

「アスカ、今から弐号機を発進させるわよ。今、レイが出ているけれど、手が出せないわ。だから使徒を引き付けてほしいの。300接近したら、A.T.フィールド最大でパレットガンを目標へ撃ちこんでみて」

 ミサトが命令し終わると、リフトがアタシの乗った弐号機を地上へと運ぶ。

 地上では、使徒がリング状の身体を回転させたまま滞空していた。アタシはその使徒の500メートルほど離れた位置に出て、拘束を解かれた。

「どうしたの、アスカ?! 早く攻撃を!」

 変わらずゆっくりと身体を回転させたままの使徒を目の前にして、アタシは嗚咽した。

「動かない・・・動かないのよ・・・!!」

「何ですって!?」

「―――来るわ」

 ミサトの驚きの声と共に、ファーストが呟く。

 使徒はその言葉に反応したかのように、身体を紐状に変形させた。その先は、何かを探しているかのように、方向を変える。

 そして、アタシの方を向いて、動きを止めた。

「戻して! 早く!」

 リフトが戻るよりも早く使徒は、A.T.フィールドを展開できるはずもないアタシのエヴァに接触し、その個所から融合しようとしていた。それは奇妙にも快楽に近い感情を起こさせるものだった。

「危険です! 弐号機の生体部品が犯されています」

「レイ! このままじゃ戻せないわ! アスカの救出と援護を!」

 ミサトの命令を受けた零号機が、アタシに近づこうとする。

 ―――イヤよ! ファースト、あんたなんか!

「目標、さらに侵食!」

「危険ね。すでに20パーセント以上が融合されているわ」





「誰よ、アンタ」

 目の前に誰かがうなだれていた。腰まで赤い液体に浸かっている。その赤さはL.C.Lのようだが、夕日に照らされた海のようにも見えた。

 髪はアタシと同じ色。ご丁寧にも赤いインターフェイスヘッドセットまでしている。

「アタシ? ううん、違うわ」

 誰かは、顔をゆっくりと上げる。そして、言った。

「アタシとひとつにならない?」

「何でよ。アタシはアタシよ」

「そう。でも、もう遅いわ」

 一瞬、アタシの身体に葉脈模様が浮かんだ。

「アタシの心をあんたにも分けてあげるわ。この気持ち、あんたにも・・・ほら、イタイでしょ?」

「イタイ? そんなわけないじゃない! そんなこと言って、あんたが寂しいだけじゃないの!?」

「寂しい? 何よ、それ」

「一人でいるのがイヤなんでしょ? だから他人を誘っているのよ」

「―――それはアンタ自身の心よ。・・・ほら」

「アタシは別に寂しくないわ! 一人でいたって平気よ! だって、アタシは大人なんだから!」





 弐号機の身体が異様な姿へと変形していく。零号機はその光景を目の当たりにしながらも、まったく手が出せなかった。零号機が近づいても弐号機のように融合されることもなく、また決定的な攻撃を加えられないためだ。

 ・・・あいつは・・・出てこないのね。

 ふと、そんなことを思った。とうの昔からなのだけれど、自分がますますイヤになった。

 アタシはあいつに会いたい訳じゃない。もう二度と会いたくないのよ。

 その時、名案がアタシの脳裏を横切った。

 そうアタシが使徒を殲滅するし、そして、あいつが傷つくこと。それを同時に叶えることが出来る方法が。

「A.T.フィールド反転! 一気に侵食されます!」

「使徒を押さえ込むつもり?」

「アスカ、機体を捨てて、逃げて! レイ、弐号機から離れなさい!」

「ダメよ。アタシがいなくなったらA.T.フィールドが消えちゃうじゃない」

「アスカ、死ぬ気!?」

「コアがつぶれます! 臨界点突破!」

 発令所からの声は次第に遠くなっていき、光が近づいた。その光の中に一番会いたい人の影が映っていた。

「・・・ママ、ここにいたの? ママ・・・どこへ行くの?」

 アタシを乗せたまま、弐号機が第16使徒と第3新東京市を巻き込んで自爆したのは、その直後のことだった。





 アタシが目を覚ましたとき、見知らぬ場所にいた。いやに天井が高い。見上げれば、赤い髪に紫の口紅をした女がいた。誰かに似ていると思ったが、それが誰かは分からなかった。しかし、それにしてもかなり背が高いのではないだろうか。

 ・・・ここはどこ・・・? アンタ、誰よ?

 疑問を口にしようとしたとき、背後で声がした。

「なぜここに子供がいる」

 聞いたことのある声だった。

「碇所長の息子さんです」

 女が答える。振り向くと、今度は背の高い男がいた。アタシがこのどこか見たことのある顔と聞き覚えのある声に、まじまじと見つめる。

「碇、ここは託児所じゃない。今日は大事な日だぞ」

 アタシから目を逸らし、側にある机に座って口元を見せないようにしている人物に話しかけた。

「ごめんなさい、冬月先生。私が連れてきたんです」

 マイクの声が響いた。その声に対し、咎めるように―――事実、咎めているのだろうが―――老いの時期に踏み込む直前の男が言った。

「ユイ君。今日は君の実験なんだぞ」

「だからなんです。この子には明るい未来を見せておきたいんです」

 目の前とマイクの声の女は知らないけれど、2人の男には覚えがある。

 そのとき、心臓が早鐘を打ち始めていた。

 アタシの知っている人物を10年ほど前に年齢を戻せば、こんなものじゃないだろうか。

 碇と冬月。

 ―――司令と副司令。

 そしてアタシは自分の姿を確認する。小さい手、低い背、短い髪。そして、アタシを”碇の息子”と呼ぶ人たち。

 アタシはあいつだった。

 そのことに気づいたとき、あいつのママ・碇ユイは悲鳴だけを残して初号機の中へと取り込まれた。




後書き
 10000Hit記念です。・・・ホントは5000Hit記念だったのですが。5000Hitの時期に思いついたネタですから。掲載するのが大変遅れた―――というよりこの一話だけでも完成させるのにこれだけの時間がかかったということなんですが。
 ホントは一度に最後まで掲載したかったのですが、か〜な〜り、長くなりそうだったので、一話出来た時点で諦めました。(>ヲイ!)
 有言不実行の私を攻めないで・・・(笑)。
00.5.14 Version 1.0
02.8.22 Version 1.1 ちょっとだけ


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