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<ご注意>



このお話は、TV版第弐拾参話から分岐しています。

そのため少々アスカが精神的にダメージを受けている状態です。


















歪んだ月
第四話 歪んだ出会い その2


 それは偶然だった。

 偶然でもない限り、アタシがそんなことをするはずがない。今でも信じらんないわよ。

 何しろアタシの隣には、初めて搭乗することになった軍用ヘリコプターに興奮しながらビデオをまわしつづける相田と、その反対側にはミサトの言葉にいちいち驚いて必死に会話を続けようとする鈴原・・・つまり2馬鹿がいるのよ?!

 ヒカリには悪いけど、こいつのどこがいいのかしら。”やさしい”ところなんてわかんないわ。単なるスケベなヤツじゃない。鼻の下伸ばしさ。

「で、どこに行くんですか? ミサトさん」

「豪華なお船で、太平洋をクルージングよん」

 ミサトがウインクすると、ヘリが丁度雲の合間を抜け、艦隊の全容が見えてきた。アタシはアレに乗っていた。・・・今回もいるわよね。

「おおっ!! 空母が5、戦艦4、大艦隊だ!! ほんと、持つべきものは友達だよなぁ」

 いつの間にアンタがアタシの友達になったのよ!

 心の内で叫んだアタシは、嫌な表情をする。隣では鈴原もそんな顔だった。その対象は違うけれど。

「これが豪華なお船ぇ?」

 情けない声で洩らすと、相田は嬉々として説明する。

「まさにゴージャス! さすが国連軍の誇る正規空母。”オーバー・ザ・レインボゥ”!」

「よくこんな老朽艦が浮いていられるものねぇ」

「いやいや〜、セカンドインパクト前のヴィンテージものじゃないですかぁ」

 相田はなおもビデオカメラを覗きこみながら興奮している。

 ほんっと、こいつも好きよね!





 朝、アタシは久しぶりに街に出た。

 このところ毎日訓練があったせいで、なかなかチャンスがなかった。

 立場上、訓練は欠かせないからどうしようもないけれど、いい加減同じことの繰り返しに飽きてきたのも確かだった。前はあんなに頑張ってきたことだが、今はあっさりしたものだ。大した努力なしで、高いシンクロ率―――既に前のアタシのよりも高い―――になっている。もちろん、前のあいつよりずっと。とはいってもあくまでもこの時点の話だけどね。

 そこへ飛び込んできた休日。

 アタシはいつも縛っていた髪を久しぶりにおろしていた。今にして思えば、これが今日の失敗の元だった。何を思ったのか、2馬鹿が後ろから声をかけて来たのよ。

 振り向いたアタシに、2馬鹿はびっくりして、しばらく声をなくしていた。と思ったら、急に相田が目を輝かせて喋り出した。

「碇じゃないか! 俺はてっきり・・・じゃなくて。そうだ! 話したいことがあるんだよ、いいかな?」

「―――僕にはないんだけど」

 肩に掛けられた手からすり抜けて、アタシは先へ行こうとする。

「そう言わずにさ。俺、憧れてるんだよ。エヴァンゲリオンのパイロットになりたいんだ」

 無理よ! というより、あんたなんかになってほしくないの!

「そんなこと僕に言われても―――」

「な? 碇の上司にでもさ、ちょっと口添えとかだけでいいんだ。な、な?」

「ケンスケ、碇が困っとるやないか」

 見かねたように、鈴原が口を挟んだ。二人が話し始めたのを見計らって、そっとそこから移動しようとすると、最悪の人物から名を呼ばれた。

「―――シンジくん」

「ミサトさん」

 振り向いたアタシにミサトはすまなそうな表情で今回のことを伝えてきたのよ。そして、羨ましそうに見てる2馬鹿を誘ったというわけ。もちろん、相田はこの話に飛びのってきた。鈴原もミサトの顔を見て即断したわ。アタシは反対したのだけれど、ミサトは笑って2人と共に行くことを強引に決めた。―――ミサトのやつ、わざとかもしれないわね。





 アタシとの対面は、最悪だった。

 クリーム色のワンピースに、チョーカーという服装。前のアタシと全く同じ。

 そして、やっぱり同じように船上の風がスカートをめくり、ビンタをお見舞いしてきた。2馬鹿の頬には思いっきり手形が残った。アタシはもちろん避けた。

「何で逃げるのよ!」

 ムキになって追いかけてくる。

「わざわざ君に殴られなきゃいけないようなことはしてないよ」

「アタシのスカートの中、見たでしょ! それで十分よ!」

 アタシは深い溜息をつく。

「船の上であんな格好するからじゃないか。別に僕がめくったわけでもないし」

「ちょっと、もう、止めなさい、アスカ! 事故でしょ」

 ミサトが間に割り込み、アスカの腕を掴んだ。アスカはミサトの手を振り払うと、ふん、と鼻息を荒くして手を引っ込めた。

「わかったわよ、ミサト。でも、そこのアンタ、いつか絶対に叩いてやるんだから!」





 船橋で艦長とミサトが前と同じ会話を皮肉の応戦をした後、士官食堂へ移動することにした。エレベーターの前で、加持さんと出会う。ミサトは一瞬目を見開き、大きな声を出して驚いた。

 士官食堂に着くと、また加持さんはミサトの寝相と、アタシのシンクロ率のことを話題にした。その間、アスカは面白くなさそうな目つきでアタシを見ていた。アスカがアタシを連れて、弐号機の元に行くことになるのは、皆が思い思いに見学できるようになってからだった。

「零号機と初号機は開発過程のプロトタイプとテストタイプ。訓練なしでもいきなりシンクロするのがよい証拠。だけど、弐号機は違う。実戦用に造られた、世界初の、本物のエヴァンゲリオン。制式タイプの。」

 アタシは昔の台詞を、思い出したように口にした。

「・・・何だ、知ってんじゃない。そうよ、これが本物なのよ!」

 誇らしげなアスカが、弐号機の上から言った。その時、激しい音と大きな揺れが二人を襲った。

「―――爆発?」

「使徒だよ」





 ママ、ママ。アタシよ。わかる?

 アタシはアスカと一緒に弐号機に乗り、ママに問い掛けた。久しぶりの赤いプラグスーツはもちろんこの身体にピッタリというわけにはいかないが、懐かしい感じがする。

 ―――反応はなかった。

「L.C.L. Fullung. Anfang der Bewegung. Anfang des Nervern aschlusses. Ausloses von links-Kleding. Sinkio-start.」

 アスカが言うと、バグもなく起動する。

「電源ソケットのある空母は、2時の方向だよ」

「わかってるわよ! じゃ、跳ぶわよ!」

 弐号機はタンカーよりジャンプすると、次々とイージス艦を踏みながら、首尾よく空母に着艦すると、ケーブルを取り付けた。





 使徒を例の釣りの戦法で倒した後。

 2馬鹿がアタシたちのペアルックをからかったけれど、アタシが全く何も言わなかったので、すぐに止めたようだ。

 アタシとしては、それどころじゃなかった。

 ママはアタシに反応してくれなかったのだ。

 今のアタシは、あいつなのか。

 ここでのアタシのママは、”碇ユイ”なのか。惣流・キョウコ・ツェッペリンではないのか。

 アタシは今、誰なのだろう。

 ふと顔を上げると、アスカがアタシを見ていた。そして、すぐに顔を背けてしまう。

 答えは―――やはり出なかった。




後書き
 30000Hit記念です。ちょっと遅くなりましたけどね。次は、ユニゾン編ですな。
00.8.21 Version 1.0


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