『教行信証』という書物について

【成 立】
 『教行信証
きょうぎょうしんしょう』は、正式書名を「顕浄土真実教行証文類けんじょうどしんじつきょうぎょうしょうもんるい」といいます。著者は親鸞しんらん(1173生〜1262没)。 親鸞の直筆が現存し、冒頭の一部を除きほぼ完全に残っています。著述の構想が生まれ、書き始めたのはいつごろかわかりませんが、おそらく親鸞が50歳前後から草稿の筆を取り始め、60代前半に整理・清書したものと思われます。その後、改訂の筆が加えられた痕跡が多数残っています。筆跡の鑑定によって、少なくとも85歳ごろまではその作業が続けられていたことがわかっています。その直筆本は「坂東本ばんどうぼん」と通称され、真宗大谷派に帰属していますが、現在は京都の国立博物館に保管されています。時々特別展示品として公開されることがありますが、国宝に指定されていることもあって、真宗大谷派に属する研究者であっても簡単には見せてはもらえません。これまでに何度か写真版が作成され、出版されています。ただ、現物と写真版では一見して天と地ほど違います。現物を一度じっくり読ませていただきたいものです。


【内 容】
 本書は、
  顕浄土真実教文類一(通称:教巻
きょうのまき)、
  顕浄土真実行文類二(通称:行巻
ぎょうのまき)、
  顕浄土真実信文類三(通称:信巻
しんのまき)、
  顕浄土真実証文類四(通称:証巻
しょうのまき)、
  顕浄土真仏土文類五(通称:真仏土巻
しんぶつどのまき)、
  顕浄土方便化身土文類六(通称:化身土巻
けしんどのまき)、
の六巻から成っています。第一巻と第三巻の冒頭には「序
じょ」が置かれ、それぞれ「顕浄土真実教行証文類序」(通称:総序そうじょ)と「顕浄土真実信文類序」(通称:別序べつじょ)と題されています。

 総序は、浄土真宗がどのような内容のものであるかを述べ、それがどのような人のための教えであるかを明らかにし、自分自身がその教えにに出あいえたよろこびを表明し、そして、それを受け継ぎ伝えてきた歴史を讃歎し、先達が歩んできた足跡をこの書に刻み込みたいと述べている。

 第一巻の教巻では、まず、浄土真宗の教えの骨格は二種の回向
えこう(往相おうそうと還相げんそう)であることを述べる。この往相・還相の二種の回向は、教巻だけの問題ではなく、『教行信証』全体を一貫する基本的な視点となっています。
 次に、拠り所となる経典(真実教)は『大無量寿経』であると決定し、その根拠となる引用文が置かれています。普通の感覚ではまったく論証になってはいないので、なぜその引用文が、真実教を決定する根拠となるのか理解し難いものがあります。この論理が飲みこめるかどうかは、『教行信証』を読んでいく上でかなり重要なポイントになります。

 第二巻は、行巻というからには「行」について書いてあるのだろうと思うのが普通でしょうが、この「行」という語を「修行」の「行」だとか「行為」の「行」という意識で理解すると大間違です。行巻の「行」は「はたらきかけ」という意味にとらえるのがミソです。親鸞が「他力」という概念を使ったのは、「行」から「私たちの行為」という意味をまったく抜き去ろうとしたからです。
 



 第三巻の信巻は

 第四巻の証巻は

 第五巻の真仏土巻は

 第六巻の化身土巻は



【特 徴】