- 「父を亡くした少女は、引き取られた修道院で一本の 木と出会った。その小さな木を少女はテュリーと呼び
二人は友達になった。いくたびも四季が巡りテュリー はみごとな木に育った。ひとりぼっちだった少女は、
修道女として穏やかな日々を送っていた。私がテュリー に目を止めたのは、そんな春の日のことだった。」
- 一本の木がおこした、やさしい奇蹟。 クリスマスの贈物本のリストにいつも載っているそうです。ニューヨークのロックフェラーセンターには毎年、大きなクリスマスツリーが飾られ、見事な電飾に彩られます。その点灯式は、TVでも放映され、一大イベントとして、おおにぎわいになるそうです。そこで飾られるクリスマスツリーを毎年探し回る庭師の男と、そのツリーにするのにふさわしい木を持っているあるシスターとの、ツリーをめぐっての交流のお話しです。
- クリスマスツリーにするのにふさわしい木は、緑色のきれいで、見事な「ドイツトウヒ」、という種類の木がほとんどだそうです。修道女のシスターアンソニーは、子供の頃、父を亡くし、修道院に引き取られました。そこで出会ったのがこの一本の木でした。少女は心を閉ざして、毎日ひとりぼっちでした。その少女のそばにいたのが、このツリーでした。何か気になることがあると、いつもツリーに話にいったり、そのツリーのしたで色んな人たちと出会いました。
- 誰でも人間以外に、このように話し掛けたり、愛情を注いだり、愛着のあるものというのは、あるように思います。花や木を大切にしたり、動物や家だったり・・・。
- やがてそんな小さなツリーは、見事な木に育ちました。そんな木に目をとめたのが、庭師の男、でした。一本の木を通して、庭師とシスターは出会い、友情が生まれていったのです。その修道院は現代世界とは隔絶されたような、まさに幸せを感じられるような美しく、自然豊かな場所にありました。シスターはある日、そのツリーを手放すことを決意します。そしてロックフェラーセンターでの点灯式の日、彼女はなくなった父の言葉を思い出しました。その言葉がとても印象的です。
- 「あのいちばんてっぺんにある星をみてごらん。あれは、みんながこの街の冷たさしか感じられなくて、つらくなったときでも、美しいものがあることを思い出させてくれるために、ああしてあそこにいるんだ。」
- そんな言葉でした。ツリーもそんな存在になったのです。立派で華やかで美しいツリーは、寂しくてつらくなった人々を明るく照らしてくれる、みんなのツリーになったのです。シスターはそれだけで木とお別れするときのつらさが癒されたのようでした。このような物語りのなかに、クリスマスの意味が隠されているように思います。クリスマスは、みんなのクリスマスなのです。ロックフェラーセンターのクリスマスツリーのように、豪華できらきらとはしないけれども、貧しい人、そして暗闇にある民のうえに、一筋の希望の光として、この世に生まれたのが、救い主としての主イエス・キリストなのです。
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